「子どもを褒めましょう!」という言葉は子育てしているうちに少なくとも1度は耳にしたことがある人は多いと思います。
しかし、褒めるから子どもは育つということを言われても、本当かと疑いたくなる人もいると思います。
また、叱る方が重要だと考える人もいるでしょう。
しかし、実際に褒めることの方が子どもにとっていいということが明らかにされています。
今回は、なぜ子どもを褒めるといい効果があるのかについて説明していきたいと思います!
目次
子どもを褒めることがとっても大事!
子どもを褒めることが重要であること明らかにした研究があります。
その研究で明らかにされた効果が「ピグマリオン効果」というものです。
それでは、このピグマリオン効果について説明していきましょう。
ピグマリオン効果とは
ピグマリオン効果とは、教師が期待するような言動を示せば、子どもの成績も上がることにつながるという効果です。
1964年にアメリカ合衆国の教育心理学者ロバート・ローゼンタールによって実験されて明らかにされたもので、「ピグマリオン効果」以外にも、「教師期待効果」や「ローゼンタール効果」とも呼ばれたりしています。
一方で、教師が期待しないことで子どもの成績が下がることを「ゴーレム効果」といいます。
なぜピグマリオン効果が起こるのか
小学生に知能テストを受けてもらい、そのテスト後に担任の教師に「このテストは将来の学力の伸びを予測するテストです」と告げます。
そして、そのテストの結果とは無関係・無作為に選んだ何人かの小学生を「将来的に学力の伸びが期待できる生徒たち」であるとその教師に伝えます。
そして、その1年後にもう1度知能テストをしたところ、学力の伸びが期待できると伝えた生徒の成績が、他の生徒よりも向上していたことがわかりました。
特に、低学年でこの伸びが大きかったこともわかりました。
これは、教師が無作為に選んだ子どもを「学力の伸びが期待できる子」であるとして、その子にも期待をするような言動を行なっていたからだと考えられる。
期待されている子はその期待に応えようとして、努力することにつながるため、学力の伸びにつながったと考えられています。
期待する言動とは簡単にいうと褒めることです。
つまり、褒めた方が子どものやる気を促し、良い結果に結びつくことがわかります。
子どもに期待するとはどういうことか
上記のピグマリオン効果は、教師だけではなく、親も同様に子どもに期待すれば、子どもに良い影響を与えると言われています。
では、期待することとはどの様なことなのでしょうか?
期待することとは、単に「この子には才能がある」「この子はできる」と思うことのみではなく(こう思うことも重要です)、子どものやっていることに関心を持ったり、子どもの話を聞いてあげたりすることも期待の中に入ります。
期待というと誤解が生じるかもしれないので、大きくいうとポジティブな言動が期待になります。
期待することで起こりうる弊害
これまで、期待についての良い効果について説明してきましたが、親が子どもに期待することによって生じてしまう悪い影響について説明したいと思います。
子どもへの口出しが多くなってしまう
子どもへの期待が高いほど、子どものやっていることに対して口出しが多くなると言われています。
この口出しはポジティブなもの(「頑張ってるね!」「すごいじゃん!」など)であったら問題ないのですが、指示・命令・要求が大半を占めてしまうと言われています。
つまり、親の感覚で「〜しなさい」「〜やめなさい」「〜したらどう」という子どもの考えを否定するような言動が多くなってしまうということです。
このことは、子どもへの期待が高い分、せっかちに子どもに成果を求める様になってしまい、親の期待にそぐわない行動を批判してしまうことがしばしばあります。
口出ししたい気持ちは、とてもわかりますが、「子どものため」を思って、否定的な言葉をグッと堪えて、
どういう言葉がけをすれば、子どもはもっと楽しくなるのかなと考えて、ポジティブな言葉をかける様にしましょう!
子どもが親の欲求を満たす道具になってしまう
期待を一歩間違えれば、子どもの願い・実態とかけ離れて、親の欲求を代理的に満たすための道具になる場合があると言われています。
例えば、「子どもの才能を伸ばしたい」と思い、スポーツクラブに通い始めたが、いつの間にか、自分が自慢するためにレギュラーになることを望んだり、
他の子よりも上達が遅いことに苛立ったりすることがあります。
これは、最初は「子どもの才能を伸ばしたい」という「子どものため」の行動であったのに対して、自慢するためや恥ずかしいなどの「親のため」に変容していることになります。
この様になってしまう原因として、親は自身の子の成功・失敗を自身の成功・失敗と同じ様に感じやすいからです。
このような認識のずれが起こり、「子どものため」といいつつ、「親のため」の言動になってしまうと頭に置いておかないと、自然と自身の欲求を満たすための方向に引き寄せられるため、常に意識しておく必要があります。
自立性支援〜期待の弊害を乗り越える方法〜
これまで期待の良い効果と悪い効果について説明してきましたが、期待の悪い効果をできるだけ抑えるための行動指針を示したいと思います。
その考え方の1つが「自立性支援」というものです。
自立性支援とは、大人が先導して子どもを引っ張っていくのではなく、一歩下がって子どもに考えさせ、決定させる。そのために必要な支援を行うという考え方のことです。
つまり、大人は子どものやっていることのリーダーではなくサポーターとしての役割をしようということです!
そこでの大人の関わり方は、子どもの活動に肯定的な関心を持ちつつ、持っているエネルギーや時間を子どものために投入することであるとしています。
肯定的な関心とは、
- 子どもがやっていることに子どもと同じ様に関心を持つこと
- 一緒に全力で活動を楽しむこと
- 子どもが何をやっても大抵のことを受け入れるというような包容力のあること
です。
この中で最も難しいのは3つ目の「子どもが何をやっても大抵のことを受け入れるというような包容力のあること」だと思います。
つい子どものやっていることに、あれダメ・これダメと言いたくなってしまいますが、それは本当にダメなことなのか、「自分都合の」ダメなことではないのかと問いかけてみてください。
その結果、本当にやってはいけないことであったら、初めて叱りましょう。叱るときは、なぜそれをやってはいけないのかをきちんと説明する様にしましょう。
こういうことを考えていると思ったよりダメなことって少ないということに気づくと思います。
この様な、ポジティブな関わりの中で育つことによって、子どもはいろいろなことにチャレンジする様になると言われています。
まとめ
今回は、褒めることについてピグマリオン効果を中心に説明してきました。
期待をすることは大前提として重要でありますが、声をかけるときに、どのような声かけが子どもにとって良いものなのかについて考える様にしましょう。
例えば、子どもが悪い成績をとった時の声かけとして、「馬鹿なんだから頑張りなさい」と「本当はできるんだから頑張りなさい」というのとでは、どちらの方が良い声かけなのかはいうまでもないでしょう。
実際に声かけするときには、この声かけはネガティブではないか?本当に「子どものため」なのか?と自分自身に問いかけ、ポジティブな言葉に言い換えましょう。
もちろん、声をかけずに暖かく見守ることも1つの方法です。
読んでいただきありがとうございました。
参考文献
- 中山勘次郎(2010)「教師の期待は子どもを伸ばすか–ピグマリオン効果を超えて (特集 子どもが伸びるとき)」 児童心理(7), 531 – 537
- 胡琴菊(2017)「ピグマリオン効果は本当なのか?教育現場での6年間の実験的研究結果からみる」 日本教育心理学会第59回総会発表論文集, 372
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