近年、「食育」というものが注目されています。「食育」は、食に関することの教育のことということは、多くの人が知っていると思います。
しかし、なぜ「食育」が重要であるのかやどのようにして「食育」をするのかについて知っている人はそこまで多くないと思います。
今回は、食育の目的や学校での食育、家庭でどのようにして食育をしていくのかなどについてご説明していきたいと思います!
目次
- 1 食育とは
- 2 子どもに食育をするメリット
- 3 学校と食育
- 3.1 幼稚園・こども園・保育園での食育
- 3.2 義務教育の食育
- 3.2.1 食育の視点
- 3.2.1.1 食事の重要性(食事の重要性、食事の喜び、楽しさを理解する。)
- 3.2.1.2 心身の健康(心身の成長や健康の保持増進の上で望ましい栄養や食事のとり方を理解し、自ら管理していく能力を身に付ける。)
- 3.2.1.3 食品を選択する能力(正しい知識・情報に基づいて、食品の品質及び安全性等について自ら判断できる能力を身に付ける。)
- 3.2.1.4 感謝の心(食べ物を大事にし、食料の生産等に関わる人々へ感謝する心をもつ。)
- 3.2.1.5 社会性(食事のマナーや食事を通じた人間関係形成能力を身に付ける。)
- 3.2.1.6 食文化(各地域の産物、食文化や食に関わる歴史等を理解し、尊重する心をもつ。)
- 3.2.2 給食は最強の食育の教材!
- 3.2.1 食育の視点
- 4 家庭と食育
- 5 まとめ
食育とは
食育の定義
まずは、食育の定義について整理していきましょう。
食育の定義にあたるものとして、食育基本法の前文にある以下の文言があります。
食育基本法 前文 食育を、生きる上での基本であって、知育、徳育及び体育の基礎となるべきものと位置付ける |
食育は生きる上で基本となるもので、食育があるから知育・徳育・体育ができるということである。
食育がきちんとできていないと、この3つの教育が効果的に行えないことからもとても重要であります。
つまり、食育というのは、生きる上でも学習を行う上でもとても重要であるということです。
食育の目的
食育の重要性は分かりましたが、なぜ食育をするのでしょうか?食育を行いどのような人間を作っていくのでしょうか?
食育基本法 前文 様々な経験を通じて「食」に関する知識と「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践することができる人間を育てる食育を推進することが求められている |
上記の文章は、食育基本法の前文に書かれているものです。
このことから、食育は「食」に関連する多様な経験から、「食」の知識と「食」を選ぶ力を習得することが必要ということがわかります。
そして、その知識や習得した「食」を選ぶ力を活用して「健全な食生活」を実践することができる人間を育成することが目的であることがわかります。
また、子どもの食育については以下のように言っています。
食育基本法 前文 子どもたちに対する食育は、心身の成長及び人格の形成に大きな影響を及ぼし、生涯にわたって健全な心と身体を培い豊かな人間性をはぐくんでいく基礎となるものである |
子どもの食育は、「健全な食生活」を実践することができる人間を育成するために、生涯にわたって健全な心と身体を培って、豊かな人間性をはぐくんでいくための基礎であるとしています。
そのため、子どもの食育は小学校や中学校などで実践される教育を効果的に行うためにも重要であるとわかります。
どうして食育が重要視されるようになったのか?
食の重要性は以前より主張されてきたものだとは思いますが、
食育基本法が平成17年(2005年)に制定されたことからも、食育というものは比較的最近注目されてきたものだということが考えられます。
それでは、なぜ「食育」が最近になって注目されてきているのでしょうか?
それは、日本人の食生活やその他の生活が大きく変化したことが関係しています。
食育を重要視している背景を食育基本法では以下のように説明しています。
食育基本法 前文※クリックすると条文が見られます社会経済情勢がめまぐるしく変化し、日々忙しい生活を送る中で、人々は、毎日の「食」の大切さを忘れがちである。 |
上記の文言をまとめると以下のようになります。
- 社会経済情勢が変化して、日々忙しい生活を送っている人が多くなった
- その中で、毎日の「食」の大切さを忘れがちになっている。
- 国民の食生活は「栄養の偏り」「不規則な食事」などの問題や海外への「食」の依存の問題など様々な問題が生じている
- 「食」に関する情報が社会にとても多くあるので、その情報を活用するためにも、自ら「食」のあり方を学ぶことが必要である
このような社会的な問題が背景として、これらの問題を解決するためにも食育を推進して、「健全な食生活」を実践することができる人間を育成することが重要であることがわかります。
食育の目標
食育をなぜするのかについての「目的」はおわかりいただけたかと思います。
では、食育をどのようにするのか、食育の目的を達成するためにどのようにすればいいのかについての「目標」について書いていきたいと思います。
目標の前に、食育は前提以下のように進められなければならないと食育基本法で規定されています。
食育基本法 第二条(国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成) 食育は、食に関する適切な判断力を養い、生涯にわたって健全な食生活を実現することにより、国民の心身の健康の増進と豊かな人間形成に資することを旨として、行われなければならない。 |
つまり、食育は以下の要素を満たすように行うものを「食育」であると言えるということです。
- 食に関する適切な判断力を養うものであること
- 国民の心身の健康の増進を目的として行うものであること
- 豊かな人間形成を目的として行うものであること
しかし、この文言だけでは実際に何をどのように行えばいいのかがわからないです。
そのため。、この文言には以下のような疑問点が残ります。
- 食に関する適切な判断力とはどのような能力なのでしょうか?
- 心身の健康はどのようにして増進できるのでしょうか?
- 豊かな人間形成とはいったいどのようなものでしょうか?
このような疑問に応えるように、「第4次食育推進基本計画」(農林水産省)では、以下にある「食育の16の目標」を示しています。
この目標を全て達成することで、食育の目的を達成できると考えられています。
食育の16の目標
- 食育に関心を持っている国民を増やす
- 朝食又は夕食を家族と一緒に食べる「共食」の回数を増やす
- 地域等で共食したいと思う人が共食する割合を増やす
- 朝食を欠食する国民を減らす
- 学校給食における地場産物を活用した取組等を増やす
- 栄養バランスに配慮した食生活を実践する国民を増やす
- 生活習慣病の予防や改善のために、ふだんから適正体重の維持や減塩等に気をつけた食生活を実践する国民を増やす
- ゆっくりよく噛んで食べる国民を増やす
- 食育の推進に関わるボランティアの数を増やす
- 農林漁業体験を経験した国民を増やす
- 産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ国民を増やす
- 環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶ国民を増やす
- 食品ロス削減のために何らかの行動をしている国民を増やす
- 地域や家庭で受け継がれてきた伝統的な料理や作法等を継承し、伝えている国民を増やす
- 食品の安全性について基礎的な知識を持ち、自ら判断する国民を増やす
- 推進計画を作成・実施している市町村を増やす
さらに、これらの目標を達成するために、様々な施策が講じられたり、学習指導要領などに反映されたりして、食育の目的・目標が達成することができるようにされています。
目的・目標の違いについてはこちらの記事をご覧ください
子どもに食育をするメリット
これまで、「食育」の目的・目標について書いてきて、「なぜ食育をするのか」「どのように食育をするのか」についてはご理解いただけたかと思います。
それでは、実際に食育を行うことで、子どもにどのような良い影響があるのかについてまとめていきたいと思います。
健康な身体と心を培うことができる
まず何より、健康な身体と心を培うことができるということです。
上記の食育の16の目標にもある
- 朝食又は夕食を家族と一緒に食べる「共食」の回数を増やす
- 地域等で共食したいと思う人が共食する割合を増やす
- 栄養バランスに配慮した食生活を実践する国民を増やす
- 生活習慣病の予防や改善のために、ふだんから適正体重の維持や減塩等に気をつけた食生活を実践する国民を増やす
- ゆっくりよく噛んで食べる国民を増やす
これらの目標を達成するために行われることを子どもたちが経験することによって、健康な身体と心を培うことができると考えています。
例えば、朝食や夕食を家族と一緒に食べることで、自ずと家族とのコミュニケーションが増加して、家族の幸せを感じたり、人と会話することが楽しいと思ったりなど心に大きな影響があると考えることができます。
また、栄養バランスに配慮した食生活や生活習慣病に配慮した食生活ができるようになることで健康な身体を培うことができそうです。
もちろん、これだけが健康な身体と心を培うのではありませんが、この目標を意識して取り組むことで、健康な身体と心に近づくことができそうです。
健康な食生活を行うことができるようになる
健康な身体と心を培うに近しいものですが、健康な食生活を行うことができるようになることも考えられます。
上記の食育の16の目標にもある
- 朝食を欠食する国民を減らす
- 栄養バランスに配慮した食生活を実践する国民を増やす
- 生活習慣病の予防や改善のために、ふだんから適正体重の維持や減塩等に気をつけた食生活を実践する国民を増やす
- 食品の安全性について基礎的な知識を持ち、自ら判断する国民を増やす
これらの目標を達成するための活動をすることによって、健康な食生活を行うことができるようになります。
例えば、朝食を欠食しないために、家族みんなで起きる時間を決めてみんなで朝食を取るようにしたり、子どもにもわかりやすく楽しく学べるようにボードゲームで遊んで、健康な食生活がどのようなものかを理解してもらうなどのことが考えられます。
健康な身体や心を培う前提に、この「健康な食生活を行うことができる」ことが必要であると思います。
子どもが楽しく学ぶことができるものに、このようなボードゲームがあります。
サラダマスターについて詳しく知りたい方はコチラの記事をご覧ください!
食事が楽しくなる
次に、食育を子どもにすることによって、食事が楽しみになる子どもが増加することが考えられます。
食事を楽しいと思うことによって、「食」に対して興味を持ち、「食」について自分から学んだり、より良い食事をするためにしようとするきっかけになります。
それだけではなく、ただ食事が楽しいと思うだけでも、心にいい影響があると考えることものできます。
上記の食育の16の目標にある以下の目標が関係していると考えられます。
- 朝食又は夕食を家族と一緒に食べる「共食」の回数を増やす
- 地域等で共食したいと思う人が共食する割合を増やす
人とコミュニケーションをとりながら食事をすることは、年齢関係なく楽しいものだと思います。
その相手が自分にとって大切な人だったり、話の内容が面白かったりすると食事そのものが楽しくなると思います。
「食」に関する社会問題に興味・関心を持つ
近年、食料問題や環境問題などの社会問題が国内・国外問わずその解決が急がれています。
「食」に興味を持つことで、これらの社会問題を解決したいと思う人を増やすことも必要になっています。
そのような背景もあり、上記の食育の16の目標には以下の目標が設定されています。
- 産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ国民を増やす
- 環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶ国民を増やす
- 食品ロス削減のために何らかの行動をしている国民を増やす
このように、環境に配慮した食品を選択する力や食品ロスについて考えることができるようになるのも食育で進めていかなければなりません。
このような社会問題について考えることがこれからの時代に必要であることは間違い無いので、食育を行うことによって、「食」に関する社会問題を考えることができるようになります。
学校と食育
それでは、子どもが大きく影響される環境の1つとして学校や保育所などがあります。
そのような教育機関ではどのような食育が推進されるのが望ましいとされているのかについて整理していきたいと思います。
「第4次食育推進基本計画」(農林水産省)では、食育を行うことにおいて、学校や保育所などがとても重要であることを以下のように言っています。
第4次食育推進基本計画 子供たちの食の乱れや健康への影響が見られることから、学校、保育所等には、引き続き、子供への食育を進めていく場として大きな役割を担うことが求められている |
そして、学校や保育所は以下のように食育を子どもに行うとされています。
第4次食育推進基本計画 様々な学習や体験活動を通し、食料の生産から消費等に至るまでの食の循環を知り、自然の恩恵として命をいただくことや食べ物が食卓に届くまでの全ての人に感謝する気持ちを育むことは重要 |
このことを整理すると
- 食料の生産から消費等に至るまでの食の循環を知る
- 命をいただくこと・食べ物が食卓の届くまでの全ての人に感謝する気持ちを育む
- これらのことを学習・体験活動を通して育成する
ということになります。
しかし、これだけでは実際に何をすればいいのかわかりません。
そのため、学習指導要領や幼稚園教育要領などに具体的にどのように食育を進めていけば良いのかを示しています。
幼稚園・こども園・保育園での食育
幼稚園
幼稚園教育要領 先生や友達と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心をもつ |
幼稚園の教育の内容などを示している「幼稚園教育要領」では、指導するべき内容として上記の「先生や友達と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心をもつ」ことが示されています。
そのため、幼稚園では、先生や友達と楽しく食事をすることで、食べることの楽しさや喜びに気付くことができ、
食事を基点として、幼稚園での様々な活動に取り組むことができ充実した生活を送ることができます。
また、幼稚園では以下のように上記の「先生や友達と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心をもつ」を行うとしています。
幼稚園教育要領 健康な心と体を育てるためには食育を通じた望ましい食習慣の形成が大切であることを踏まえ、幼児の食生活の実情に配慮し、和やかな雰囲気の中で教師や他の幼児と食べる喜びや楽しさを味わったり、様々な食べ物への興味や関心をもったりするなどし、食の大切に気付き、進んで食べようとする気持ちが育つようにすること |
つまり、「先生や友達と食べることを楽しみ、食べ物への興味や関心をもつ」ことを実現するために、食の大切さに気づくようにし、進んで食べようとする気持ちが育つようにすることが必要だとしています。
そのためには、和やかな雰囲気で教師や他の子と食べる喜びや楽しさを体験したり、色々な食べ物へ興味を持ったりすることなどをする必要があるとしています。
こども園
幼稚園と違い、0〜満3歳未満の子どもも預かる子ども園では、年齢ごとに応じた内容が「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」で示されています。
幼保連携型認定こども園教育・保育要領※クリックすると条文が見られます乳児期 満1歳以上満3歳未満 満3歳以上 |
認定こども園の教育・保育の内容などを示している「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」では、指導するべき内容として上記のことが示されています。
乳児期の子どもについては、授乳という生理的欲求を、子どもに合わせてゆったりとした環境で満たすことによって、子どもは安心感を持って園での生活を行うことができるようになるため、とても重要です。
そのような安心感から、食べたことのない離乳食にチャレンジすることができたり、食事以外の活動を活発に行うようになります。
今後の食育にもつながるとても大事な段階ですので、食事がとても楽しくなるように工夫する必要があります。
満1歳以上満3歳未満の子どもについては、1歳の子どもでは離乳が完了した子と未了の子が入り混じるため、子どもの状態に合わせて食育を進めていく必要があります。
この時期の子どもは離乳が完了していても、まだ食べたことのない食べ物が多いため、それらにもチャレンジできるようゆったりとした環境で、食事を行う必要があります。
その時に、色々な食べ物を食べることや食事そのものが楽しくなるように、
「初めての味だけど、さっぱりしていて食べやすいよ」
「トロトロに煮込んであるからおいしいよ」
といったポジティブな声かけを行うようにしましょう。
満3歳以上の教育内容は、幼稚園のものと同じになっていますので、割愛します。
保育園
保育園の保育内容を示している「保育所保育指針」では、指導するべき内容として上記のことが示されています。
保育所保育指針※クリックすると条文が見られます乳児期 満1歳以上満3歳未満 満3歳以上 |
保育園では、認定こども園と同じように、0歳から子どもを保育するため、乳児期・満1歳以上満3歳未満・満3歳以上にわけて、食育の内容が設定されています。
内容や重要な点は認定こども園と同じですので割愛させていただきます。
具体的な活動例
- みんなで食事をする
- 芋掘りや野菜栽培などの体験活動
- 収穫した野菜などを使った料理づくり
- 食べ物に関する絵本の読み聞かせ
具体的な活動例としては以上のことなどが考えられます。
子どもの教育には子どもの発達に応じて、適切な教育を行う必要があります。
例えば、屠殺場見学などは幼児期の子どもにとっては、とても刺激的すぎるため、トラウマになる可能性があります。もちろん、屠殺場見学などは命の大切さを感じてもらうには有効的なものですが、幼児期の子どもにとって(小・中学校の子どもたちにとってもですが)適しているとは考えにくいです。
そのため、子どもの発達に応じて、理解しやすかったり、楽しく学べたりするコンテンツや工夫をするようにしましょう。
義務教育の食育
第1章 総則 第1 小学校(中学校)教育の基本と教育課程の役割 2(3)※クリックすると条文が見られます学校における体育・健康に関する指導を,児童(生徒)の発達の段階を考慮して,学校の教育活動全体を通じて適切に行うことにより,健康で安全な生活と豊かなスポーツライフの実現を目指した教育の充実に努めること。 ※<>内は小学校のみで、()内は中学校で書かれています。 |
これは小学校・中学校学習指導要領にある食育に関することが書かれている一番大きな目標を示している文章です。
この文章をまとめると以下のようになります。
- 体育・健康に関する指導を学校の教育活動全てを通して行う
- 健康で安全な生活・豊かなスポーツライフの実現を目指した教育を行うようにする
- 特に食育の推進・体力の向上に関する指導・安全に関する指導・心身の健康の保持増進に関する指導を教科の特質に応じて全てで行うようにする
- 指導を通して、家庭・地域社会と連携しながら生涯を通じて健康・安全で活力ある生活を送るための基礎を培う
これらの目標を達成するために、「食に関する指導の手引(文部科学省)」では、「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」に分けて、それぞれどのように教育を行なっていくのかについて以下のように示しています。
- 知識・技能
食事の重要性や栄養バランス、食文化等についての理解を図り、健康で健全な食生活に関する知識や技能を身に付けるようにする。
- 思考力・判断力・表現力等
食生活や食の選択について、正しい知識・情報に基づき、自ら管理したり判断したりできる能力を養う。
- 学びに向かう力・人間性等
主体的に、自他の健康な食生活を実現しようとし、食や食文化、食料の生産等に関わる人々に対して感謝する心を育み、食事のマナーや食事を通じた人間関係形成能力を養う。
このことから、学校に置いて食育は以下のように進められるべきであることがわかります。
- 食事の重要性・栄養バランス・食文化などについて理解できるようにする
- 健康・健全な食生活に関する知識・技能を身につけるようにする
- 正しい知識・情報を使って自分の食生活などについて管理したり、判断できるようにする
- 食や食に関わる人たちなどに対して感謝する心が育まれるようにする
- 食事を通じた人間関係形成能力(コミュニケーション力)を育成するようにする
しかしこれでは、どのようにして食事の重要性などを理解するようにすればいいのか?健康・健全な食生活に関する知識・技能とはいったい何なのか?などについての疑問がまだまだ残ります。
そこで以下にある食育の視点を示すことによって、さらに具体的にどうすればいいのかについて示しています。
食育の視点
「食に関する指導の手引(文部科学省)」では、上記の食育の目標を達成するために6つの「食育の視点」を以下のように示しています。
- 食事の重要性、食事の喜び、楽しさを理解する。【食事の重要性】
- 心身の成長や健康の保持増進の上で望ましい栄養や食事のとり方を理解し、自ら管理していく能力を身に付ける。【心身の健康】
- 正しい知識・情報に基づいて、食品の品質及び安全性等について自ら判断できる能力を身に付ける。【食品を選択する能力】
- 食べ物を大事にし、食料の生産等に関わる人々へ感謝する心をもつ。【感謝の心】
- 食事のマナーや食事を通じた人間関係形成能力を身に付ける。【社会性】
- 各地域の産物、食文化や食に関わる歴史等を理解し、尊重する心をもつ。【食文化】
食育の視点は、「食事の重要性」「心身の健康」「食品を選択する能力」「感謝の心」「社会性」「食文化」の6つで説明されています。
これらの視点はまだまだ抽象的でわかりにくいため、それぞれ、先ほどと同様に「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」に分けて説明されています。
食事の重要性(食事の重要性、食事の喜び、楽しさを理解する。)
食事の重要性の「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」※クリックすると条文が見られます知識・技能 |
これらをまとめると、食事の重要性などを理解するためには、以下のような活動が必要であることがわかります。
- 人間が生きていくために食事は必要不可欠であることを理解する
- 食事の良い効果について理解する
- 規則正しい食生活の重要性を理解する
- 食に関する情報を収集できる
- 自分で理想的な食生活を実現するために考え行動できる
- 食事に興味・関心を持つ
- 自分で調理したり、栄養バランスを考えた食生活をしようとしたりしようとする心を育成する
心身の健康(心身の成長や健康の保持増進の上で望ましい栄養や食事のとり方を理解し、自ら管理していく能力を身に付ける。)
心身の健康の「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」※クリックすると条文が見られます知識・技能 |
これらをまとめると、食事の重要性などを理解するためには、以下のような活動が必要であることがわかります。
- 食事の基本の栄養・手洗い・雰囲気などを理解する
- 健全な食生活に必要なことを身につける
- 1日3食の栄養バランスの良い食事や適切な運動・休養の重要性を理解する
- 様々な食品の栄養的な特徴を理解する
- 自分で理想的な食生活を実現するために考え行動できる
- 食事に興味・関心を持つ
- 自分で調理したり、栄養バランスを考えた食生活をしようとしたりしようとする心を育成する
食品を選択する能力(正しい知識・情報に基づいて、食品の品質及び安全性等について自ら判断できる能力を身に付ける。)
食品を選択する能力の「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」※クリックすると条文が見られます知識・技能 |
これらをまとめると、食品を選択する能力を身につけるためには、以下のような活動が必要であることがわかります。
- 日常の食品や料理名、その栄養素、安全・衛生面について理解する
- 上記の知識を活用して簡単な調理を行う技能を育成する
- 食事前後の安全・衛生についてどのようなことが必要か考える
- 食品の良否を見分ける
- 食品の栄養素とその働きを考えて選択する
- 自分で食品の品質・安全性の情報を得ようとする心
感謝の心(食べ物を大事にし、食料の生産等に関わる人々へ感謝する心をもつ。)
感謝の心の「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」※クリックすると条文が見られます知識・技能 |
これらをまとめると、食品を選択する能力を身につけるためには、以下のような活動が必要であることがわかります。
- 自然のおかげで自分たちの食事が成り立っていることを理解する
- 全ての食事には多くの人や動物・植物のおかげであることを理解する
- 食品を無駄なく活用するための技能を身につける
- 自然と自分の関係について考える
- 環境に配慮した食生活とはどのようなものか考える
- 食に関する気持ちを伝えようとする心を養う
社会性(食事のマナーや食事を通じた人間関係形成能力を身に付ける。)
社会性の「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」※クリックすると条文が見られます知識・技能 |
これらをまとめると、社会性を身につけるためには、以下のような活動が必要であることがわかります。
- 食事マナーを身につける
- 協力して食事の準備や後片付けをするために必要な技能を身につける
- 楽しい食事には何が必要か考える
- コミュニケーション手段としての食事の重要性を理解する
- 食事を通してコミュニケーションを取ろうとする態度を育成する
食文化(各地域の産物、食文化や食に関わる歴史等を理解し、尊重する心をもつ。)
食文化の「知識・技能」「思考力・判断力・表現力等」「学びに向かう力・人間性等」※クリックすると条文が見られます知識・技能 |
これらをまとめると、社会性を身につけるためには、以下のような活動が必要であることがわかります。
- 郷土料理・伝統的な料理や季節・行事ごとの料理があることを理解する
- 日常の食事には地域の農林水産業が関係していることを理解する
- 日本や外国の伝統や食文化を大切にするためには何が必要か考える
- 様々な食文化を尊重しようとする態度を育成する
給食は最強の食育の教材!
小学校・中学校の学習指導要領や食育の視点などを整理してみると、「給食」がどれだけ大きな教育効果があるのかと感じていただけているかと思います。
例えば、給食を食べながら友達と楽しくおしゃべりをする(コミュニケーションをとる)ことによって、食事の楽しさがわかりますし、食事の準備や片付けも自分でかつ協力して行うことができます。
また、献立表にも栄養素が書いてあることが多いのは、どんな食事でどのような栄養が取れるのかを子どもたちにわかってもらうためにあります。
さらに、結構話題で取り上げられる地域限定の給食のメニューも食育の要素が含まれていると考えることができます。広島県のカキのソテー焼きや富山県の湯でズワイガニ、長崎県の皿うどんなどのご当地給食メニューは基本的にその地域で撮れるものや昔ながらの郷土料理である場合が多いです。
このような料理を給食に取り入れることによって、地域の料理などの食文化や食材を調達している地域の人たちに話を聞きにいくこともでき、生産者への感謝の心を育成する活動にもつながります。
このように、給食は「食育の視点」である食事の重要性・心身の健康・食品を選択する能力・感謝の心・社会性・食文化の全てに貢献することができる最強の教材であることが分かったと思います。
もちろん学校の食育は、給食だけではなく他の教科やその他の教育活動においても同時に行われるべきものであるので、給食だけやっていれば食育ができていると考えないように注意しましょう。
しかしまず、学校での食育が適切に行われているのかというところは、給食がきちんと食育の視点を満たすように活用されているのかを見てみるといいでしょう。
家庭と食育
これまで、学校での食育について整理してきましたが、学校と同様に、家庭での食育も非常に重要です。
食育基本法では、家庭の食育の重要性から以下のように食育における家庭の役割について規定しています。
食育基本法 第5条(子供の食育における保護者、教育関係者等の役割)※クリックすると条文が見られます我が国の未来を担う子供への食育の推進は、健全な心身と豊かな人間性を育んでいく基礎をなすものであり、子供の成長、発達に合わせた切れ目のない推進が重要である。 |
この条文のポイントは以下の通りです。
- 子どもへの食育の推進は、子どもの成長・発達に合わせて行うことが重要
- 父・母などの保護者と教育・保育に関わる人が連携して、家庭・学校・地域などで子どもが楽しく食について学べるようにする
- 子どもの食育では、健全な食生活・食の安全について理解できるようにする
- 子どもの食育では、食に関する感謝の気持ちを持つようにする
- 子どもの食育では、食品の安全・健康な食生活に必要な栄養についての知識を習得できるようにする
- 子どもの食育では、社会人として必要な食事マナーを身につけるようにする
つまり、家庭での食育では、食に関する基礎的な部分の習得ができるようにするべきであることがわかります。
食に関する基礎的な部分とは、健全な食生活を行うための知識であったり、人を不快にさせない、気持ちよく食事ができるなどの食事のマナー、食品の安全について(極端ですが、フグには毒があり資格がある人が人が捌いたものでないと食べてはいけないなどです)などのことを指します。
しかし、これでは家庭で教えるべきことはわかってもどのように子どもに食育をしていくのかがわかりません。
そのため、下に簡単に取り入れることができる家庭での食育について書いていますので、このまま読み進めてほしいです!
家庭での食育の身近な取り組み例
少なくとも1日1回は一緒にご飯を食べる
最も簡単で取り入れやすい家庭での食育は「家族一緒に食事をとる」ことです。
人と一緒に食事をすることは楽しいことで、その相手が大切な家族との食事であれば楽しいことは言わずもがなでしょう。
大切な家族と食事を取ることによって、食事の楽しさがわかったり、食事のマナーについて話し合いをするきっかけになったりもします。
また、今日の献立には何が使われているなどの話をして、後から栄養についてみんなで調べたりする活動にもつなげたりすることもできます。
食育以外にも家族で食事を取ることで、家族間のコミュニケーションが増加したり、子どもの変化に気づきやすくなったりするメリットも考えられます。
一緒に料理を作る
「一緒に料理を作る」ことも家庭でできる食育の1つでしょう。
一緒に料理をすることで、どの料理にはどんな食品が使われているのか、食品そのものを生で触ること、調理方法を実践することなど食事をするときに必要なスキルを学ぶことができるでしょう。
また、家族で食事を取ることと同様に家族間のコミュニケーションが増加することが考えられます。
自分が作った料理を家族に食べてもらい、美味しいやありがとうと言ってもらえることなどから、感謝することの重要性を感じて、普段食事を作っている人たちなどの食に関わる人たちへの感謝の気持ちを持つようになることも考えられます。
ただ一緒に料理を作るだけでなく、「一緒に献立を作成する」こともとても効果的な食育です。
一緒に献立を立てることで、どんな料理の組み合わせがいいのか、どういう食材を使うと栄養バランスがいいのか考えることにつながります。
子どもに合わせて、栄養から食材を選び献立を決めることや複数の料理の中から一緒に選んだりすることなどの活動が考えられます。
ボードゲームで遊ぶ
次に、ゲームで楽しみながら食育を進めていくことも1つの方法です。
食育を目的とした様々なボードゲームが販売されています。
ボードゲームを使うことによって、子どもは楽しみながら食について学ぶことができます。
このボードゲームも年齢に合わせて、選択する必要があります。
以下に食育を目的としたおすすめのボードゲームを紹介していきます。
- 未就学児・小学校低学年向け
- 小学校中学年以上向け
サラダマスターについて詳しくはコチラの記事をご覧ください!
まとめ
今回は、「食育」について定義・目的や学校・家庭での食育について整理してきました。
「食育」は子どもが将来生きていく上で、最も基本的な部分で、とても重要であることがわかってもらえたと思います。
そのため、身近な小さなことからでも、今回知ってもらえた食育の目的を思い出して、食育に取り組んでもらえたら、とても嬉しいです!
ありがとうございました!
コメントを残す