皆さんは、日本の教育の目的・目標を知っているでしょうか?今、子どもが受けている教育はどこを目指して行われているのかについて理解することはとても重要なことです。
この教育の目的・目標は、これからの日本が向かう方向を大きく示しています。なぜなら、その教育の目的・目標に沿った教育が日本で行われ、その教育を受けた子どもがこれからの日本を作っていくのです。つまり、教育の目的・目標を理解することで、日本が向かう方向が予測できるようになるのです。
これからの日本を作っていく人を作る教育がどのような目的・目標を理解することは、全員にとって、とてもメリットのあることであると思います。
では、今回は日本の教育の目的・目標について説明していきたいと思います!
(注)この記事は3記事構成の2記事目です。
1つ目の記事はコチラからご覧ください!
目次
教育基本法
義務教育の目的

教育基本法第5条第2項義務教育として行われる普通教育は、各個人の有する能力を伸ばしつつ社会において自立的に生きる基礎を培い、また、国家及び社会の形成者として必要とされる基本的な資質を養うことを目的として行われるものとする。 |
- 個人の能力を伸ばす
- 社会で自立的に生きる基礎を培う
- 国家・社会の形勢者として必要な基本的な資質を養う
義務教育は、後に出てくる「学校教育法」において、子どもに9年(小学校6年、中学校3年)の義務教育を受けさせる義務があると規定しています。
この9年間の教育も教育基本法における教育の目的・目標を達成するために行われるものです。
つまり、この義務教育の目的を達成することで、教育の目的・目標の達成に近づくのです。
注意してほしいのは、義務教育の目的を達成することによって、教育の目的・目標のすべてが達成されるものではないということです。あくまで「義務教育」は「教育」の一部であり、他にも「社会教育」や「家庭教育」など様々な教育があり、それらすべてで、教育の目的・目標を達成することができるのです。
この義務教育の目的も抽象的であるため、以下のような疑問が出てきます。
疑問点
- 個人の能力を伸ばすためにはどのようにすればいいのか。
- 社会で自立して生きるための基礎とはどのようなものなのか。
- 国家・社会の形勢者として基本的な資質とはどのようなものなのか。
義務教育の目的をより具体的にした目標は、「学校教育法」に規定されています。
学校教育法
学校とは
義務教育の目標の前に、そもそも学校とはどのようなものが学校と言えるのでしょうか。教育業界で一般的に学校と言われるのが学校教育法第1条に規定されているもの(一条校)を指す場合が多いです。
学校教育法第1条※クリックすると条文が見られますこの法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。 |
義務教育の目標
義務教育の目的は教育基本法において規定されていましたが、義務教育の目標については学校教育法第21条において規定されています。
学校教育法第21条※クリックすると条文が見られます義務教育として行われる普通教育は、教育基本法(平成十八年法律第百二十号)第五条第二項に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。一 学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。 |
この文章を見る限り、教育基本法の目標とあまり大差ないように思えますが、大きく違う注目してほしい点があります。
それは、教育基本法の目標にはなかった「どのようにして」教育を行うかについて言及されているという点です。
義務教育の目標1

学校内外における社会的活動を促進し、自主、自律及び協同の精神、規範意識、公正な判断力並びに公共の精神に基づき主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと。 |
上記は学校教育法にある義務教育の目標の1つ目です。一見、教育基本法における教育の目標にある項目とほとんど同じに感じるかと思います。
しかし、この「学校内外における社会的活動を促進し」という部分に注目していただきたいです。この部分は、今まで見てきた中で初めて教育の「方法」について言及している部分なのです。
義務教育の目標1で育成したいとしている「自主・自律の精神」「協同の精神」「規範意識」「公正な判断力」「主体的に社会の形成に参画し、発展に寄与する態度」を「社会的活動」という方法を用いて育成しようということを示しています。
一方で、教育の目標と同じように、育成したいものに関しては、具体的にわかりにくいので、以下のような疑問が残ります。また、「社会的活動」という方法に関しても、抽象的で、どのような活動を子どもに行えば良いのかこの時点ではわかりません。
疑問点
- 自主・自律、協同の精神とは何なのか
- 規範意識とはどのようなものを指すのか
- 公正な判断力とは何なのか
- 主体的に社会の形成に参画・発展に寄与する態度とはどのようなものなのか
- 社会的活動とはどのようなものなのか
義務教育の目標2

学校内外における自然体験活動を促進し、生命及び自然を尊重する精神並びに環境の保全に寄与する態度を養うこと。 |
義務教育の目標2は、教育の目標での「生き物を大切にする」の部分と大きく関係していそうですね。
この条文を読むと、なんとなく教科の「理科」「生活」でやったような昆虫探しや植物観察などや、遠足での動物園・水族館が思い浮かぶかと思います。
疑問点
- 生命・自然を尊重する精神とはどのようなものなのか
- 環境の保全に寄与する態度とはどのようなものなのか
- 自然体験活動とはどのようなものなのか
義務教育の目標3

我が国と郷土の現状と歴史について、正しい理解に導き、伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する態度を養うとともに、進んで外国の文化の理解を通じて、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと。 |
義務教育の目標3は、教育の目標での「社会を大切にする」の部分と大きく関係していそうですね。
この条文を読むと、なんとなく教科の「社会」でやったことを思い浮かぶかと思います。
疑問点
- 伝統と文化を尊重しているとはどのような状態なのでしょうか
- 日本と郷土を愛しているとはどのような状態なのでしょうか
- 他国を尊重しているとはどのような状態なのでしょうか
- 国際社会の平和・発展に寄与する態度とは何なのでしょうか
- 日本と郷土の現状・歴史について正しい理解をするためにはどのようにすれば良いのでしょうか
- 外国の文化の理解とはどのようにすれば良いのでしょうか
義務教育の目標4

家族と家庭の役割、生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解と技能を養うこと。 |
義務教育の目標4は、教育の目標での「社会を大切にする」の部分と大きく関係していそうですね。また、この条文には「どのようにして」教育するのかについて言及されていないので、教育の目標での「能力」にある「幅広い知識」の一部を成していると考えることができそうです。
疑問点
- 家族と家庭の役割・生活に必要な衣、食、住、情報、産業その他の事項について基礎的な理解・技能とはどのようなものを指すのでしょうか
- 基礎的な理解・技能を養うにはどのようにすれば良いのでしょうか。
義務教育の目標5

読書に親しませ、生活に必要な国語を正しく理解し、使用する基礎的な能力を養うこと。 |
義務教育の目標5は、教育の目標での「能力」に関係してきそうです。
なんだか教科の「国語」が関係していそうですね。
疑問点
- 読書に親しませるにはどのようにすれば良いのでしょうか
- 生活に必要な国語の正しい理解・使い方とはどのようなものなのでしょうか
義務教育の目標6

生活に必要な数量的な関係を正しく理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。 |
義務教育の目標6は、教育の目標の「能力」に関係していそうです。
なんだか教科の「算数」に関係していそうですね。
疑問点
- 生活に必要な数量的な関係とはどのようなものなのでしょうか
- その正しい理解・使い方はどのようにすると身につけることができるのでしょうか
義務教育の目標7

生活にかかわる自然現象について、観察及び実験を通じて、科学的に理解し、処理する基礎的な能力を養うこと。 |
義務教育の目標7は、教育の目標の「能力」に関係していそうです。
なんだか教科の「理科」に関係していそうですね。
疑問点
- 生活に関わる自然現象とはどのような現象を指すのでしょうか
- 科学的に理解・処理する基礎的な能力はどのようなものを指すのでしょうか
義務教育の目標8

健康、安全で幸福な生活のために必要な習慣を養うとともに、運動を通じて体力を養い、心身の調和的発達を図ること。 |
義務教育の目標8は、教育の目標の「能力」に関係していそうです。
なんだか教科の「体育」「家庭科」に関係していそうですね。
疑問点
- 健康・安全・幸福な生活に必要な習慣とはどのようなものなのでしょうか
- 心身の調和的発達とはどのようなものなのでしょうか
義務教育の目標9

生活を明るく豊かにする音楽、美術、文芸その他の芸術について基礎的な理解と技能を養うこと。 |
義務教育の目標9は、教育の目標の「能力」に関係していそうです。
なんだか教科の「音楽」「図工」「書写」「国語」などに関係していそうです。
疑問点
- 音楽・美術・文芸などの基礎的な理解・技能とはどのようなものなのでしょうか
義務教育の目標10

職業についての基礎的な知識と技能、勤労を重んずる態度及び個性に応じて将来の進路を選択する能力を養うこと。 |
義務教育の目標10は、教育の目標の「社会を大切にする」の部分と大きく関係していそうですね。
なんだか教科の「社会」に関係していそうですね。
疑問点
- 職業についての基礎的な知識・技能とは何なのでしょうか
- 勤労を重んじている状態はどのようなものなのでしょうか
- 個性に応じて将来の進路を選択する能力はどのようにして育成されるのでしょうか
義務教育の目的・目標まとめ
これまで、義務教育の目的・目標について説明してきました。義務教育の目標では教育の目的・目標にはなかったどのように教育を行うのかについて明記していました。
これによって、学校が教育の目的・目標を達成するために何を行えばいいのかについて少し具体的になりました。例えば、学校の教科がこの部分に関係してそうだなとなんとなく感じることができたかと思います。
しかし、注意していただきたいことは、特定の教科がある1つの目標を達成するためにあるのではないということです。学校の活動すべてを通じて、義務教育の目標を達成するということを意識してほしいです。
そのため、学校で起こること(授業・授業外関わらず)・学校が関係していることすべてが、この目的・目標に関係しています。逆に、学校が関係している教育活動で、この目的・目標に関係していないものはないということです。
学校の教育活動と義務教育の目的・目標の関係が自分でわからない時は、学校に確認を取るといいでしょう。もし関係があるならば、自分自身の教育に対する観点が広がり、逆になければ学校の教育活動の意味がなく、学校が教育活動の見直しにつながるので、どちらにしてもより良い教育につながるので積極的に聞いていきましょう。
また、教育基本法の教育の目的では、「幅広い知識と教養」としかされていなかったことに対して、学校教育法の義務教育の目標では、様々なものの「基礎的な理解・技能・能力」が記述されていることから、「幅広い」の部分が少し具体的になったということもわかります。
義務教育の目的・目標は、教育基本法の「教育の目的・目標」を達成するためにあります。
そのため、義務教育の目的・目標は、教育の目的・目標と繋がっていなければなりません。そして、義務教育の目的・目標を整理することによって、その繋がりを見ることができるようになったと思います。
次回は、義務教育の中の小学校について詳しく説明して、教育の目的・目標がどのようにして現実の学校に反映されているのかについてわかるようにしていきたいと思います。
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