ホームスクーリング(ホームスクール)は、学校に通学せず、家庭や地域に教育の拠点を置いて学習を行うこと。オルタナティブ教育の形式の1つ。
教育の場は家庭のみではなく、主に家庭で学ぶが学校にも通うという形態であったり、行政やホームスクーリング支援団体が提供するものがある。
日本におけるホームスクーリングは、ホームスクーリングが盛んなアメリカとは異なり、教育の場を提供する団体が少ないことや法律が未整備であるという課題がある
目次
アメリカのホームスクーリング
実施状況
全米家庭教育調査(National Household Education Survey)(2016)によると、アメリカ全体で5〜17歳の子どものうち、約169万人(約3.3%)がホームスクーリングで学んでいます。
そのうちの約15%が公立学校に通い、約2%が私立学校にも通っています。また、学校で過ごす時間は1週間のうち6〜10時間が最も多く(約56%)ついで1〜5時間(30%)となっています。
出典)U.S. Department of Education, National Center for Education Statistics(2019)「Homeschooling in the United States: Results from the 2012 and 2016 Parent and Family Involvement Survey(PFI-NHES: 2012 and 2016)」
法律
アメリカは州によって法律が異なりますが、親が自らの子どもに義務教育を提供することは、全州で合法とされています。加えて、有資格者の家庭教師による義務教育提供を認める州もあります。つまり、学校教育のみではなく、親や家庭教師などの個人にも義務教育の提供が認められています。
一方で、各州はホームスクーリングに対する規制も設けています。
- 通知義務
- 教師要件
- 教育内容
- 教育時間
などに規制を設けています。この規制があることによって、学校に通わなくとも義務教育としての教育の質は担保されているようになっているのです。
ホームスクーリングのあり方
ホームスクーリングを提供する主体は、親や家庭教師のみではないです。
アメリカでは公立学校や行政機関もホームスクーリングを支援する形で義務教育を提供しています。
学校が提供するホームスクーリング
独立学習プログラム(カリフォルニア州)
独立学習プログラムは、公立学校に在籍しながら学習を自宅で行うことができる制度です。このプログラムは、教育課程を速く/ゆっくり進めたい生徒や、諸事情で授業を学校で受けることができなかった生徒などが学ぶためのものであり、高校卒業資格を取りたい成人などもこのプログラムを活用しています。
このプログラムでは公立学校と同内容のカリキュラムに沿った教育が行われ、教員免許保有者によって監督・評価されるという仕組みです。
また、有資格の教員が学習成果物の時間的価値を算出して、それに応じて州の補助金が支出されます。
学校外の公的機関が提供するホームスクーリング
通信学習プログラム(アラスカ州)
アラスカ州では「7〜16歳の子どもを公立学校に就学させなければならない」という親の責任を規定しています。一方で、私立学校へ就学させたり、親や有資格の家庭教師から教育を受けさせている場合はこの責任を免除するとしています。
また、このプログラムの提供者は、学区と州のどちらもあり、このプログラムを受講する受講する子どもはどちらかに在籍することを選択することができます。
このプログラムを利用する子どもそれぞれに有資格の担当教員が割り当てられ、担当教員の支援と承認をもとに個別学習計画が作成されます。
個別学習計画は、学区と州の基準に対応したものであることが求められ、学力評価計画も作成する必要があります。
プログラムを利用している子どもの人数と登録期間に応じて額が決定され、支出されています。
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参考文献
- 吉井健治(2000)「日本におけるホームスクールの可能性と課題―ホームスクールの一事例を通じて―」 社会関係研究 ,6(1・2),55-76
- 宮口誠矢(2020)「学校教育とホームスクール ─家庭を学習拠点とする義務教育機会の諸相」 日本教育政策学会年報,27(0),25-38
- U.S. Department of Education, National Center for Education Statistics(2019)「Homeschooling in the United States: Results from the 2012 and 2016 Parent and Family Involvement Survey」
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